| 王宮を出た私たちは、リオンの案内でまっすぐにランプ亭へと向かった。 リオンはやはり慣れているのか、通りの人混みに構わずすいすいと前へ歩いて いってしまう。 私は何度も人にぶつかりそうになり、それを避ける度にリオンを見失いそうにな った。 だから、城を出てから・・・というよりも、城の中ででもそうだったのだけれども・・・ 気になっていた周りの人々の視線も、いつの間にか気が付かなくなっていた。 大通りを左に曲がり、その後細い道を何本か曲がったところに来て、リオンの 歩く速さが急に落ちた。どうしたのかと先を見てみれば・・・どうやら、そこが目的地、 ランプ亭のようだった。 宿の前では、クリスが待っていた。 彼女は、私たちの姿・・・というよりも、おそらくリオン・・・を認めると、頭を下げた。 「お待ちしておりました」 「・・・しばらく、世話になる。・・・・・・彼女のことは、頼む」 短くそれだけ言うと、彼は一人で宿の中へと入っていってしまった。 私が中へと足を踏み入れる前に、扉はまるで私とリオンとを引き離すように閉 まってしまい、私は行き場をなくして往生してしまった。 ・・・・・・そう言えば、これからどうしたらいいんだろう。 リオンに着いていくべきか迷っていると、クリスがいつもと同じ口調で私に話し 掛けてくれた。 「じゃあ街を案内するわね。・・・あ、でもきっと疲れてるから、今日はもう部屋 で休みたいかしら」 確かに、樹海からここまでの道は歩き通しであり、急いでいたために宿を利用 しないこともあったので、少し休みたいという気持ちもあった。 けれども、見知らぬ街に来たのは初めてのことで、そのことが私の好奇心を かき立て、多少の疲れは忘れさせていた。 「・・・ご飯は、まだかしら?そろそろ夕食時だけど・・・私もまだたから、どこか に食べに行きましょ」 リオンに付いて歩いていたときには、追いつくのが精一杯だったために気が 付かなかったのか、クリスとレストランを探してしばらく歩いて、私は、彼女 が用意した宿が、メインストリートから大分離れていたことに気が付いた。 周りは細い路地が走り、お店もちらほらと見受けられるがほとんどは民家の ようである。 街全体が建物の素材のため、薄青い色に染まっている。民家はお店と違って 特にそれぞれに特徴がないので、時々私は、同じところを歩いているような 錯覚を覚えた。 クリスに案内されたレストランは、メインストリートに面していた。すでにほと んどのレストランが賑わっており、どの店の窓からも食欲をそそる匂いが辺り に満ちていた。 店の中では、着飾った店員さんたちが、注文を取ったり料理を運んだりして いて大忙しであった。 レストランには、ここに来るまでにリオンと何度か入ったことがあるけれども、 いつでもどこでも慌ただしく、私は度々どうしたらいいかと考えてしまっていた。 だから、他のテーブルでくつろいでいる人を見ると、どうしてこの状態でのん びりできるのかと、羨ましく思ってしまう。 忙しい店員さんが持ってきてくれたメニューには、思った通り見慣れない文字 が綴られている。クリスが教えてくれるメニューとその料理をイメージしながら、 なんとか料理を決めることができた。そしてようやく捕まえた店員さんにそれを伝 えて、それでなんとか、私は気分が落ち着いた。 店内を見回すと、レストランはほとんど満員であることがわかった。大抵は 一人か二人で、まれに家族で連れだって食事をしている。 みな、各々に食事を楽しんでいる様子だったけれども、ふと、私には気になる ことがあった。 ・・・・・・王宮で見かけた“角”を持つ人々・・・はここにもいるのだけれど、どこか、 角を持たない人々とは隔てられているように見えた。一人ひとりのお客でも、 まるでそれぞれが意識して集まっているかのように、固まって席についている のだ。そして、彼らと他の人々のテーブル上の料理の数・・・と、おそらく質も・・・は、 全く異なっているのだ。 これはいったい、どういうことなのだろう? そんなふうに考えていると、店員さんが、待ちに待った料理を持ってきてくれた。 「口に合うといいんだけど・・・」 クリスが見守る中、私は自分の頼んだ「ベナ・ピラフ」を、スプーンですくった。 ・・・・・・next page >> |