視線の先に座る青年は、先ほどとはまた違う、硬い表情であった。

どうしたらいいのかと立ちすくんでいると、何も言わずにリオンが私の横で跪いたので、

私もそれに倣った。

そのどこが悪かったのか、ちらりと私が見上げた時の青年は、私たちの仕草を見て少し

悲しげな顔をしたように見えた。

「リオン、よく戻ってくれた」

「・・・・・・はい」

いつもと変わらない、抑揚のない返事だった。首を下げてしまったため、リオンの表情

は前髪に隠れてしまい、私の方からはよく見えなかった。

カイン、と入り口の兵士から呼ばれた目の前の男の声はまだ若い。多分、リオンより

も若いのではないだろうか。

やはり悲しげな表情でリオンのことを少し見つめていたけれども、ふと、視線を私の方に

移して訊ねてきた。

「それで、そちらの方は・・・・・・?」

多分、リオンに訊いたのだと思う。リオンが説明するのが普通なのだけれども、魔剣の

影響で話すこともままならない様子の彼に説明させるのは、難しいのではないだろう

か。私が説明した方がいいのだろうか・・・・・・

どうしたらいいかと悩んで口を開きかけた時、意外にも、リオン自らが質問に答えた。

「彼女は、英雄。樹海の秘宝を持つ者です」

そう、端的にリオンが言うと、周りにいた兵士たちがいっせいにざわつき始めた。

控えている私の方からはあまり見えないのだけれども、ちらちらとこちらに視線を向ける

人々の様子が、視線の端に映り、なんとも落ち着かない気分だった。

「・・・・・・まさか、貴女が。噂は、聞いています」

カインが、少し驚いたような表情で、私にそう告げる。・・・・・・確かに、リオンの言った

ことは正しいのだけれども、余りにも簡潔過ぎて、正確に事実を述べてはいない・・・・・・

のだと思う。

 私は、一人で樹海を探索して秘宝を見つけたわけではない。だから、何か特別な力

を持っているわけでもなければ、戦いに強いというわけでもない。ジェニライやレイムー

トのような魔法は使えないし、リオンやタプラスのように剣や弓に長けているわけでも

ない。

だから・・・・・・秘宝を持っているとはいえ、周りからこのように注目されるような存在で

は到底ない。

リオンの言ったことに付け加えるべきかどうかを迷っていたけれども、どこから説明した

方がいいのかわからず、私は戸惑った。

すでに、カインを含めこの部屋にいる人々は、私を、樹海の秘宝を持ち帰った英雄とし

て見てしまっていて、そのことが余計に私を躊躇わせていた。

「そなたは、この国に来るのは、初めてかな」

興味深そうな視線を私に向けて、カインは訊いた。王に言葉を掛けられるのは生まれて

初めてのことで、失礼のないよう要点だけを答えるようにした。

だから素っ気ないかもしれないけれども、私は頷きながら短く、はい、と返事をするに

留めた。彼は微笑みながら言った。

「そうか。ならば、ゆっくりしていくのがよろしかろう。ところで、今日はどちらにお泊りかな」

それに対して、リオンが下を向いたまま答えた。

「彼女は私の連れてきた客人。ならば、閣下のお手を煩わさぬよう、私が世話をするのが

当然のことでございます」

その彼の答えにカインは再び悲しそうな顔をしたが、顔を伏せたままのリオンにはおそらく

分からなかっただろう。

「それもそうだな。・・・・・・変わったな、リオン」

かけられた言葉に、彼は下を向いたまま黙する。もしも彼が自由に話せたなら、彼はいっ

たい、どんな言葉を返すのだろう。

言葉が通じないのは、とても悲しいことだった。

そうして、二人の言葉が途切れたのはほんの一瞬のことで・・・

「・・・・・・わかった。好きにするがよい」

そう言ったカインには、もはや悲しい色は見えず、もとの毅然とした硬い表情が私たちを

見下ろしていた。






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