| ―――私に、付いてきて欲しい。 声には出していないが、リオンの瞳は、確かにそう訴えていた。 後で会おうと、先程の青年が言っていたから、おそらく彼にリオンは会いに行くのだろう ・・・・・・たぶん。 もともとはリオンの・・・というよりも魔剣の・・・頼みで来たのだから、そちらを優先させた ほうがいいかもしれない。 私は頷いて、リオンに付いていくことにした。 リオンが向かったのは、目の前にあった例の大きな建物だ。 建物自体が大きい・・・といっても、樹海で見たあの樹ほどではなかったけれども・・・もの だったが、その入り口の扉も、リオンの背の高さの数倍はあった。 扉には一面に、何かの植物の彫刻が大きく施されており、より一層重厚な雰囲気を醸し 出していた。 その扉を、脇に控えていた兵士二人が軽々と開けて、私たちを中に入れてくれた。 「リオン様、お待ちしておりました。カイン様がお待ちです」 門を通った時に告げた兵士の言葉に、リオンの表情が陰った。けれども、他に何を言う こともなく、リオンはすたすたと先へ歩いて行ってしまった。 その建物の中も、やはり大きな壁面や柱一つひとつに精緻な彫刻が施されており、 街の中とは違って厳かで、口を開くことも躊躇われてしまうほどの、なんとも言えない緊 張に満ちていた。 何より、この建物の薄蒼い素材の放つ、氷のような冴え冴えとした空気の流れが、私 にそう感じさせたのかもしれない。 建物の中には、街の中よりは幾分少ないものの、やはり人は多かった。 ほとんどの人々は、門の脇にいた兵士のような鎧姿ではなく、リオンのいま着ているよ うな服装である。 そういえば、リオンの服は街の人のものよりも上等のように思われた。 それに、兵士たちも彼に声を掛けるときには必ず、様を付けて呼んでいる。 リオンは樹海でも、様を付けて呼ばれていたから今まで気づかなかったのだけれど、街 の人々が集まってきたことといい、リオンは随分位の高い人なのではないだろうか。 私とリオンは今、扉から続く銀色の絨毯の上を歩いていた。その先には、上へと緩や かな弧を描く階段が続いている。 リオンはそのまま階段を上がっていったので、私もその後に続いた。 階段を上っていったその先も、大きな広間となっておりその広間の奥には、これまた立 派な扉が立ちはだかっていた。リオンが真っ直ぐに歩いていることから、どうやらそこへ 向かっているようだった。 扉の横には、やはり兵士たちが構えており、私たち二人を前にして扉を開けてくれた。 扉の先は、部屋があってそこで行き止まりのようだった。 中央に置かれた玉座や、配備された調度品の華やかさに、私は今ごろになってそこが、 「城」というものなのだと認識した。・・・・・・勿論、本で読んだだけの知識なので、実際 に見るのも、中に入るのも、これが初めてなのだけれども。 玉座に座っているのは、先程会った青年だった。やはり見間違いではなく、額より少し 後ろの部分に、1本の角のようなものが生えていた。角が生えているといえば、フェンリ ルがそうだったけれども、彼よりもずっと目の前の青年の方が人間に近いように見えた。 「リオン様がお着きになりました」 事務的な口調で、扉のところにいた兵士の一人が私たちの入室を報告した。私は一瞬、 何かが怖いと感じて、小さく身を震わせた。 ・・・・・・next page >> |