気が付くと、私は洞窟のようなところをリオンとともに歩いていた。

辺りの空気は冴えており、吐く息が、白い霞となって眼前を覆っていた。


・・・おそらく、寒さが緊張から私を解放してくれたんだろう。

ゆっくりと視線をめぐらせると、一面の蒼い氷柱が目に入ってきた。

樹海は、陽の光は遮られていたものの、とても暖かかった。

・・・そのときと同じ服装なのだから、寒いのも、無理ないかもしれない。


前を見ると、遠くの方に柔らかな白い光が見えた。


・・・そういえば、ここは洞窟なのに、全体がぼうっと明るいような気が

する。


氷柱を良く見てみると、ところどころに”明かり”が埋め込まれていた。

けれどもそれは、焚き火のような燃えるような明かりではない。

それが、洞窟全体を薄蒼く照らし出している。


歩みを進めるうちに近づいてくる光は、洞窟の出口だ。

けれども、洞窟を抜けたその先にあった光は、太陽のものではなかっ

た。

目に入ってきたのは、そびえ立つ大きな門だった。氷でできたそれは、

やはり薄い蒼色を帯びており、ところどころに明かりが灯り門全体を浮

かび上がらせていた。



それにしても、ここはいったいなんなのだろう。

門は家にあるものと違ってかなりの高さがあり、ここからでは中の様

子はうかがい知れない。

足を止めて門を眺めていた私に、隣に立ったリオンが低い声で言った。

「・・・ここが、エマソンだ」


門の前には、見張りの兵たちが立っていた。彼らは、洞窟から出てき

た私たちに気が付いたらしく、声を上げた。

「り・・・リオン様・・・・・・!」

駆け寄ってくる兵士達の声に、門の中からも兵士達が姿を現した。

駆けつけてきた皆が、驚きと喜びの表情でリオンの周りを取り囲んだ

ので、私は少し離れたところでその様子を見守っていることしか出来

なかった。



その様子を見ていて、私もなぜだか嬉しくなってしまった。


リオンは、今までずっと、ここを離れていた。

それも、誰にも別れを告げずに。



突然、親しくしていた人が、目の前からいなくなってしまったら

私は、どうするだろう。



ただ呆然として、佇んでいるだろうか。

がむしゃらに、探し回るだろうか。

事実を受け入れられずに、めちゃくちゃにわめくだろうか。


裏切られたと思い、怒り狂うだろうか。

見放されたと思い、自分を責め続けるだろうか。

嫌われてしまったと思い、とめどなく涙するだろうか。



それとも―――

その存在を、忘れてしまうだろうか。



彼らは、いったいどんな気持ちでリオンを迎えているのだろう。


そして・・・・・・リオン。


兵士たちがリオンのことを取り囲んでいるので、彼の表情はわからない。

けれども、きっと喜んでいると思う。


・・・・・・そう、思いたかった。





                           ・・・・・・next page >>






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