リオンと旅を続けるうちに、こんなにも自分の近くに人がいるというのに、

何も自由に話すことが出来ないということは、とても悲しいことだと私は

思った。

確かに、相手は私の言葉を聞いて、理解して、頷いてはくれるのだけれ

ども、それではなにかが足りないのだ。


・・・・・・多分、届いていないんだと思う。

まるで、樹海の中で見たせせらぎのように、言葉や、そこに含まれた想

いが、一方向に流れていってしまうような、そんな感じがする。


そして、相手のなかを通り過ぎて、透明な風へと還ってしまう。


ただ、時が過ぎていくのと同じことのように。


私もそこに置き去りにされてしまうような気がした。



・・・・・・もしかしたら、これが”孤独”ということなのかもしれない。

私は、相変わらず半歩後ろを歩いているリオンのことを、ほんの一瞬盗

み見た。

樹海を発ったときと同じように、彼はただ無言で歩みを進めている。


彼は、樹海では常にひとりだった。

誰かが一緒にいるところなど、見たことがなかった。

・・・・・・これは、レイムートさんも同じだったような気がする。


どうして、独りでいられるのだろうか。


・・・考えてみると、私も、ずっと独りで生きてきたのだけれども。

それでも、このような”孤独”を感じることは、いままでなかった。


・・・もしかすると、ひとりでいることと、孤独ということは違うことなのか

もしれない。


そう考えてみて、また私はわからなくなってしまった。


・・・どうして、私はひとりでいたのに孤独を感じなかったのだろう。


ふと、私は自分の家を思い出していた。

住み慣れた家は、ゆるやかな丘の上にひとつだけ腰を下ろしている。

家の脇には、斜面を均して耕した畑があり、夏には青々とした葉が一

面に広がっている。


その周りには、家よりも少しばかり背の高い木が数本、枝を広げている。

丘へと登る柔らかな風が梢を揺らし、さわやかな旋律を陽光と共に私に届

けてくれる。

その枝作られた巣からは、餌を求めるひな鳥の声が季節になると聞こ

えていた。


丘を下ったところには小川が流れている。

差し込む陽の光を受けて、水底を泳ぐ魚たちが時折銀色の光の尾を描い

ている。

よく晴れた日に、涼しげな風を受けながら水を汲んだり洗濯をしたりする

のは、とても気持がよかった。



・・・・・・そうか。

私はいままで、ずっと気が付かずにいたんだ。

寂しさという、孤独の気持ちを他の気持ちが洗い流していたんだ。


そういえばこの気持は、ひな鳥たちが巣を発ってしまったときや、木々が

葉をすっかり落としてしまったときに感じた寂しさと、似ているかもしれない。


まるで、自分がひとり、置いていかれてしまったような、そんな気持ち。


すべてから切り離されて、何も見えず、聞こえず、感じられず・・・・・・


ふと、私は焚き火の横でじっと魔剣を見つめるリオンの横顔を見て思った。

彼も、何かから置いていかれてしまったのだろうか・・・





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