ひとまず部屋に戻った私は、頭の中を一度整理することにした。


リオンはカインの剣を持って、この国を出た。


樹海で私に出会って、それがきっかけでエマソンに戻った(・・・・・・のかどうかは分か

らない)。

樹海で彼は、魔剣は大切な人を守るために持っていると言った。

・・・彼が翼を持っているから、彼がカインの剣・・・聖剣を持っているのも確かである
。

とすると、彼は魔剣と聖剣の2本の剣を持っていることになる。

・・・・・・魔剣以外のリオンの剣を、私は見たことがないのだけれども。



そこまで考えて、私は訳が分からなくなってしまった。

 リオンが持っている魔剣は、色彩は似ているのだけれど、エマソニルの聖剣とは刃

の形がまったく違うのだから、聖剣と魔剣が同一のものとは考えにくい。


その時ふと、私は思いついた。

・・・・・・聖剣に力があるように、魔剣にも力があるんじゃないかな?

リオンが魔剣の力のせいで動けなくなったところを、私は一度だけだけれども見ている。

人を動けなくさせてしまうほどの力があるのだから、翼を付ける力があってもいい

んじゃないかな・・・・・・。

 そう考えてみると、リオンは聖剣を持って国を出た訳ではなく、魔剣を持っていった

ということになる。


・・・・・・つまり、カインの剣を盗んだのは、まったくの別人という可能性だ。


・・・・・・たまたま、剣が無くなったのと、リオンがエマソンを出たタイミングが同じだっ

ただけなのかもしれない。、

もしかしたら、聖剣を盗んだ人が、わざと合わせたのかもしれない。


・・・確かにこういう考え方もできたのだけれども、今私がクリスやカインから聞いた

話だけでは、本当にこれが真実なのかは分からなかった。

それに、リオンがどうして魔剣を必要としていたのかも不明のままだ。


 だからまずは、リオンが持っている魔剣についてと、リオンが守ろうとした“大切な人”

について調べることが必要だと思った。


・・・・・・勿論、直接リオンに聞くことは出来そうになかった。

リオンのことに詳しいのは、いったい誰かしら・・・?


そう考えて、私の頭に浮かんだのは、カインとクリスの顔しかなかった。

・・・カインに直接会うのは難しいけれど、クリスならば、夜になればまたここへ戻って

くる。


・・・・・・ひとまず、クリスが戻ってくるのを待ってみよう。


これからの予定が決まって、気分が落ち着いた私は、ふと、革袋に視線を向けた。

樹海に行くために入れてきた道具しか、中には入っていない。


・・・・・・いや。

そういえば、中には樹海の秘宝も入っていた。

壊れないよう、丁寧に包装して入れたつもりだったけれども、雑多な革袋の中に入れ

たまましばらく旅を続けてしまっていた。・・・・・・壊れてはいないだろうか。

 今さらになって心配になった私は、そっと、袋の中から包みを取り出した。

片手に転がるほどの、小さな大きさのそれは、包みの中から七色の色彩を放ちながら

現れた。

一瞬ひんやりとした感触のあるそれは、果たして石と言っていいのだろうか?

硬さと形は切り出した石・・・あるいは結晶のように見えるのだけれども、ひんやりとした

感触の後に、手のひらには暖かな感触がゆったりと脈打つように感じられる。

そして・・・・・・

その中に煌く、無数の光の粒。

その蒼い光の粒は、よく見てみると少しずつ動いていた。

・・・・・・粒は、中心から生まれてきているようだった。

そして外側の粒は、ゆっくりゆっくりと消えている。

一見すれば泡のように見えるのだけれども、消えていく様はまるで霞のようで、捕ら

えがたい。


 それはともかく、この秘宝はとても扱いにくい。

本当ならば、これは樹海・・・世界樹とジェニライのものであり、そこにあるべきものだ

った。・・・・・・今私がこれを持っているのは、彼らの”願い”なのだけれども。

かといって、邪険に扱っていいはずはなかった。

今は私の持ち物であっても、いずれは彼らのところに返さなければならないのだから

・・・・・・と思う。

 私は手に持っていた秘宝をテーブルに置くと、革袋の中を漁ってみた。

入っているのは、少し小さめの袋とナイフ、着替えが少しと、火を熾す石・・・それから、

ここに来るまでに買った干し肉などの食料が入っていた。無論、これだけではこの秘

宝をどうすることもできない。

 どうしたものかと、私はベッドの上に仰向けに寝転んだ。

ベッドには天幕のように布が掛かっており、それが岩肌の視界を遮ってくれて、どこ

か居心地がよかった。


・・・・・・・・・・・・・。



 どうやら、私はそのまま眠ってしまったらしい。

クリスのドアを叩く音に気が付いたとき、いつの間にか部屋は・・・・・・窓の外は、暗く

なっていた。






                                     ・・・・・・next page >>






[Back]          [Top]