自分の部屋に戻った私は、これからどうしようかと考えながら、しばらく窓辺に

頬杖をついて、エマソンの街並みを眺めていた。

陽がどうやら傾き始めたようで、徐々にその当たっている場所が小さくなってい

った。

街の天井が開いているせいか、風はいつでも吹いてくるようだった。時々顔を撫

でていく風は、仄かに暖かく気持ちがよかった。


 ふと、子供の高い声がして、私は視線を路地裏に落とした。

額の上に角の生えた子供たちと、普通の子供たちが数人で、追いかけっこをして

遊んでいる。子供たちは、とても楽しそうだ。

その角の子供とカインのことが、普通の子供とリオンが、あるいはクリスのこと

が、私には重なって見えた。女将さんが今朝言っていた言葉が思い出される。


『昔はクリスとよく遊んでいたんだけれど・・・。国王と兵士じゃあ、身分が違い

すぎるものね』


・・・けれどもどうして、この国の人々は角を持っているかしら?


ふと、私は思った。

昨夜、街で・・・レストランで見かけた、あの光景。

角を持っている人々は、まるで持っていない人を避けているように、彼らだけで

まとまって食事をしていた。

それで私は、もしかすると彼らは、角を持っているというよりも、付けているので

はないかと思った。あれは何かの印で、仕事や身分を表しているのではないだ

ろうか・・・・・・?

 そう考えてみると、レストランで見た人々の身なりや食べているもの、そして王

であるカインがあの角を付けているのは、つじつまが合うように思えた。


 ぼんやりとその自分の考えに満足していると、今度は路地裏から、鋭い大人

の声が耳に入った。

・・・窓から顔を出してそちらの方に注目してみれば、先ほどの子供たちが、それ

ぞれ別の大人に引き離されているのが見えた。・・・多分、彼らの親なのだろう。

子供の方は、怒られているようだ。

 確かに、通行人がいるので、路地裏とはいえ駆け回って遊んでいるのは、

迷惑になるかもしれない・・・。けれども、どうして引き離されているの?


 不思議に思う私に、その答えはすぐに届いてきた。・・・・・・子供たちの親の声が、

聞こえてきたのだ。

「あなたは鬼族なのよ!どうして下族の子と遊ぶの!?」

「鬼族の人の迷惑になるでしょう!早く離れなさい、ほら!」

交互にそう聞こえて、私には一瞬何を言っているのかよく分からなかった。


―――いったい、何があったのかしら?


子供たちは、まだ遊ぼうとしていたけれども、結局は親の力に負けて、別れの挨

拶をしながらそれぞれの家に帰っていったようだ。


 それにしても、彼らの親たちは、なんと言っていたのだろう。・・・少なくとも、子

供たちは納得してはいなかったようだけれども・・・。

私は部屋を出て、キッチンにいた女将さんに、先ほどの光景を話してみた。

すると、彼女は一瞬寂しそうな顔をして、訳を説明してくれた。

「この国にはね、2つの種族が住んでいるの。・・・種族って、わかるかしら?」


―――そういえば、樹海で出会ったタプラスは、確か海羅という種族だったよ

うな・・・・・・


「えぇ、海に住んでいる代表的な種族ね。…この国には、角を持っている人がい

て、鬼族って言うのよ」

そういえば先ほど聞き慣れない言葉を聞いた気がしたが、それがキゾクだった。

・・・・・・でも確かその時は、もう一つ耳慣れない言葉があったような気がする。

「鬼族の人たちは、力も私たちよりも強いし、頭の切れる人も多いわ。・・・だから、

彼らの中には、私たちを蔑む人もいるの。彼らは私たちのことを、下族と呼ぶ

こともあるわ」

・・・カゾク。そう、言っていた気がする。

「・・・・・・勿論、鬼族でも私たちより劣る人もいるし、私たちの中にも鬼族の人より

優れた人はいるわ」

そうに違いないと私は思う。ならばどうして、あのように振る舞うのだろう。


・・・・・・私にはわからない。きっと、あの子供たちだってそうだろう。

もっとも、私がただ単に子供だからだと言われてしまえば、それまでなのかも

しれないけれども。

「どうして・・・なのかしらね。子供たちはあんなに楽しそうなのに・・・・・・クリスとカ

インも、昔は夜になるまでよく一緒に遊んでいたわね。でもいつの間にか・・・2人

とも、自分の位置を決めてしまったの。悲しいことだけど、今のこの国では、それ

が当たり前になってしまったわ」

最後の方の彼女の言葉は、本当に寂しそうだった。






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