街道を誰かと歩くのは、これが2度目である。

けれども、初めての時・・・クリスとともに歩いていた時・・・とは、どこか

違っていた。


・・・・・・原因は、わかったいるのだけれども。


何かに追い立てられているような、そんな感じがする。


連れ・・・リオン・・・とは肩を並べているようだけれども、正確に言えば

彼の方が1歩ほど、私の後ろを歩いている。そのことが、余計に私にリ

オンの持つ”魔剣”の存在を気にかけさせていた。


私達は無言で、足早に街道を行く。

もともと寡黙なふうのリオンが、話しかけてくる様子はなかったし、私も

特に話をしたいという気分ではなかった。それよりも、一刻も早くエマソ

ンに着いて、この緊張にも似た雰囲気から逃げ出してしまいたかった。


そのせいだろうか。無言で歩き続けていたけれども、私には街道を流

れる風の匂いも、風に揺れる草の葉音も、過ぎ行く鳥のさえずりも、何

一つ心に届いては来なかった。

満天の夜空の下で野宿をすることもあったが、やはりリオンは無言で、

食事の際にときどき話しかけてみたけれども、頷きしか返ってはこなか

った。

”魔剣”のせいだということはわかっているけれど、誰かと一緒にいるの

がこんなに心地悪いと思ったのは、これが初めてだった。


・・・・・・けれども考えてみると、私が誰かと一緒に歩むようになったの

は、家を出てからのことだ。

私を育ててくれた人が土に帰ってから、私はずっとひとりで暮らしていた。

生きていくための術はすでに知っていたし、一人で生きていくことに不自

由さを感じてはいなかった。

それが当たり前になっていたのだ。


だから、スターサボテンを見て、他の土地のことやそこに住んでいる人

たちのことを知りたくなったのは、私が憧れていたからなのかもしれな

い。憧れという鏡は、いつも良いところだけしか見つめている者に映して

はくれない。

今の私はきっと、憧れという鏡の、その向こうにあるものを、見ているの

だろう。そんなことを考えながら、リオンと歩いていた。



樹海を出てからしばらくは、変わり映えのない草原が広がっているばか

りだったけれども、なだらかな坂になっていた街道を登りきったところに

来て、突然目の前に現れた光景に私は目を奪われた。

道は二手に分かれており、その一方の先・・・・・・遥か遠くに、青く広が

る何か。


―――あれはいったい、なんだろう・・・?


「あれが、海羅の棲む”海”だ」

誰にともなくそう呟いた私の言葉に、背後から答える声があって私は驚

いた。リオンではない。

振り返った私の目の前に佇んでいたのは、樹海で姿を見なくなって久し

い、フェンリルだった。

どうしてここにいるのだろう。”海”という場所に、行く途中なのだろうか。

尋ねようとした私に、彼は視線を街道・・・海とは別の方へと続いている・・・

へと向けて言った。

「彼は先へ行った。早く行ったほうがよくはないか?」

辺りを見回すと、なるほど、リオンは海を見ていた私などには構わず、す

たすたと先へと行ってしまっていた。

迷子になるわけにもいかず、あったばかりではあったが、私はその場で

フェンリルに別れを告げて、リオンのあとを追いかけた。

フェンリルは無表情に私を見送ってくれた。


リオンとの距離はだいぶ離れていた。

ようやく追いついた私だったけれども、リオンは特に何か言うこともなく、

黙々と歩み続けていた。そして私が横に並ぶと、彼はふたたび私の少し

後ろを歩くようになった。・・・どうやら、エマソンまでこの状況から解放さ

れることはないようだ。

すがるような気持で背後を振り返った私の視線の先に、もはやフェンリル

の姿はなかった。





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