5.

「どうするんだよ、ルベス。引き受けて見つからなかったら、大恥だぞ!!」

「見つければいいのよ。何が何でもね。」

「そんな無茶な・・・」

ルビエスの独断は、今に始まったことではないが、いつも巻き込まれているロイはその

彼女の性格に頭を抱えていた。だが、言ったことを実行してしまうのが、ルベスのすご

いところでもある。

「それとも、ここで王の依頼を断って、村へ戻れって言うの?それこそ恥だわ。・・・・・・そ

れに」

「それに?」

言葉を切って、ルビエスは彼に挑戦的な視線を投げかけた。

「会ってみたいのよ。”神官”ってやつにね。」



「いらっしゃいませ。当店の品物は・・・って、ロイにルベスちゃんじゃないの。遅かった

わね。」

店番をしていたフィアレートは、入ってきた客がロイたちだと気がついて、カウンターから

身を乗り出した。

「それが、・・・城での用事は早く終わったんだけど、空いている宿屋がぜんぜん見つか

らなくて・・・。」

城での謁見が終わってから、すでに一時ほど経っていた。辺りは夕飯の買出しに来る人

たちで賑わいを見せている。

旅人の多いラインハルトにはもちろん宿屋が多かったが、他の王都から船が来る日には、

それでも宿の数が足りないほどで、街の案内所などで寝泊りをする者も多い。ロイたちが

訪れた今日も、ラムリリースを経由して来た船が到着したばかりであった。

「なんだ、宿屋を探しててこんなに遅かったのね。それならそうと、早くここに来ればよ

かったのに。」

「?姉さんそれってどういう・・・」

「そうなるじゃないかと思ってとっておいたわよ。隣の宿に部屋を二つね。案内するか

らついてきて。」

フィアレートの面倒見のよさは、昔から変わっていない。最近は出稼ぎに出て行ってし

まっていてほとんどフレイン村で会うことができなくなっていたが、今日その姿を再び見

て、昔の頃を二人は思い出していた。

「あ、ありがとう、姉さん。」

「ありがとうございます。フィアレートさん。」

「どうってことないわよ、これくらい。」

フィアレートが店番をしていた店の隣の宿屋は、かなり大きいレンガ造りの建物だっ

た。といっても、部屋数が多いので残念ながら一部屋の大きさはそこまで大きくはない。

2人は受付の人からそれぞれ鍵を受け取ると、各々の部屋に荷物を置いて、少し早め

の夕食を食べに出かけた。


―――夕方。ラインハルトの町はとても賑わっていた。表のメインストリートは夕食の

ための買い物をするでいっぱいだった為、2人は宿の裏口から外へ出た。裏通りには

日常生活用品や武器、薬などを扱う店が並んでいた。2人は地図にかかれた料理屋

を片っ端からあたることにした。地図とは、ルベスが宿の女将に頼んで描いてもらった

ラインハルトの城下町の略図のことである。早速2人は宿に一番近いレストランを見つ

けた。しかしそこは、店主によれば予約が必要とのこと。諦めて次をあたろうとした時、

ロイが道端の露店で何かをじっと見つめているのにルベスは気がついた。話をするの

を人に押し付けて何をしているのかと思いながらルベスはロイに歩み寄った。

「何をしているのよ、ロイ。」

「ルベス見ろよ〜。かわいいだろ〜〜?」

「?それ、レミングの子供じゃない。」

ロイの目下にあったものは、箱詰めにされたレミングの子供だった。大きなくりくりとし

た目が愛らしい。ロイが夢中になったのも無理はない。ロイはその中の真っ白い毛の

レミングを一匹手に取った。

「こいつがいいかな。」

「・・・買うつもりなの?」

幾分、呆れながら訊いたルベスに、悪びれた様子もなくロイは言った。

「いいじゃないか、旅は賑やかなほうがいいだろ?」

「それはそうだけど・・・値段、わかって言ってるの?」

「値段?・・・えーと・・・」

箱の側面には、大きく「7000L」と書かれていた。「L」とは、ラインハルト独自の通貨、

ラインのことである。7000ラインがどのくらいの額なのかわかりやすく、言うと今ロイ

達が泊まっている宿に三食付で一週間は泊まれるくらいである。

無論、そんな大金を彼らは持っていない。

「・・・・・・。」

「じゃ、次の店を探しに行くわよ。」

値段のあまりの高さに諦めて、ロイはレミングを箱に戻し、露天の陰気なおじさんに軽く

礼を言うと、ルベスと共に別の店を探しに出かけた。

しかしながら、結局2人が夕食にありつけたのは、月が出始めた頃だった。

「ふーーーっ、おいしかった〜。それにしても空いているレストランがあってよかったな〜。」

「その言葉、これで十回目よ。」

大盛りのグーラッシュを平らげて満足感に浸っているロイを片目に見ながら、ルベスはフル

ーツティーをすすった。村でロイの母親がよく入れてくれたお茶もおいしかったが、初めて

飲むこのフルーツティーの味も、悪くはなかった。

一休みをして、ティーカップをソーサーの上に置きルベスは立ち上がった。

「じゃあ、そろそろ行くわよ、ロイ。」

「あ、ああ。」

2人は勘定をすませると、宿屋へと戻り各々の部屋で一夜を明かした。―――いや、明か

すはずだった。





[BACK]  [TOP]  [NEXT]