8. 3人は、まずこれからどのようにリフェモビリアへ向かうかを、話し合うことにした。 そしてロイの予想していた通り・・・ルビエスとアムの意見は一致しなかった。 「船で行きましょう、ロイ様。その方が早くリフェ・モビリアに着けるわ。」 「陸路を行った方がいいわね。海であいつらに襲われたら、逃げ場が無いわ。」 ルベスの意見に、アムが溜息を吐いて呆れるように言った。 「私たちに逃げ場が無いってことは、ロイ様たちを追いかけている人たちにだって逃げ場 が無いってことでしょ?陸路じゃあいくらでも敵は援軍を送り込めるけど、海路だったら、敵 の数も限られるじゃない。」 「海には海賊もいるし、嵐で船が難破したら、ひとたまりがないことくらいわからないの?」 「海賊だって嵐だって、運がよければ来ないけど、敵の援軍は必ず来るのよ。」 二人の意見は平行線上で、決して交わることは無かった。となれば、次の展開は誰にでも 予想のつくもので、当然、ロイにもそれは分かっていた。すなわち――― 「で、ロイはどう考えるの?」 あまりにも予想通りの展開に、ロイは思わずその場にうずくまりたくなった。 しかし、答えないわけにもいかないし、いずれにしてもルビエスかアム、どちらかの意見を とらなければならなかった。 ルビエスもアムも、間違ったことを言っているわけではない。どちらも良い方法と考えられ た。 「えーと・・・。」 ロイは、二人に睨まれながら、それぞれの利点と欠点を頭の中でまとめてみた。 ルビエスの方法で行くと、敵の襲撃は避けられない。しかし、海路よりも逃げ切れる確率は 高い。 アムの方法では、敵の襲撃事態が制限されるので陸路よりも安全だが、嵐や海賊に遭遇 することがありうる。 必然をとるか、偶然をとるか。 しかし、本人の希望とはいえアムを連れて行く以上、より安全な方法をとらなければならな いだろう。彼女の安全を確保する責任は、自分達にある。そう考えれば、海路をとった方 が良いのかもしれない。それに何より、彼女は旅に慣れていないのだ。 しばらく考えて、ロイは顔を上げた。 「海路で行った方がいいんじゃないかな・・・。」 もしかしたら、ルビエスは別々に行こうなどと言い出すかもしれない・・・そう思って、彼は言 葉に気をつけながら自分の意見を言った。 「ほら、やっぱり言った通りじゃない。」 勝ち誇ったような顔をするアムを無表情に見ながら、ルベスは了解の意を示した。 「分かったわ。船で行きましょう。」 相変わらずの冷静な意見に、ロイは内心ほっと息を吐いた。 波止場は、人で賑わっていた。出発の時が近いのか、船から降りる人よりも船に乗り込む 人の数のほうが圧倒的に多い。大きな荷物を背負っていく人、別れを惜しむ人、緊張した 面持ちの人、好奇心に胸を躍らせている人・・・様々な人が行き交うその場所で、ロイとル ベスはアムが乗船券を買って戻ってくるのを待っていた。 「ルベス・・・」 アムの戻る気配がなかったので、ロイはそう切り出した。 「何?」 視線をロイに向けずに、彼女はそう答えた。 「・・・もしかして、怒ってるのか?」 「何を?」 切って捨てるような口調に、彼はますます困惑していた。やはり、陸路をとった方が良かっ たのだろうか。 「船・・・でさ。」 「どういうこと?」 振り向いたその顔にあきれたような情が見出せた。 「アムの意見を選んだから・・・さ。」 「ああ・・・別に怒ってないわよ。ロイはそっちの方が安全だと思ったんでしょ?」 「う・・・ん」 歯切れの悪い彼の返事を気にする様子もなく、ルビエスは続ける。 「正直ね、アムを連れて行きたくないの。」 やっぱりそうなのか・・・と勝手に思い始めて、気の重くなるロイ。 「叔父さんだって心配するだろうし・・・何より、私たち自身、自分のことで精一杯だから、 私たちが彼女を守るのは難しいわ。」 「・・・・・・うん。」 「だから、私は彼女が言うんだったら、それが仇になっても私たちを一概には責められない かな、って思ったの。・・・まあ、彼女が私たちを頼ってくるかどうかは分からないけど。」 結局のところ、すべてはロイの思い過ごしのようだった。重荷から解放されたように気持ち が軽くなって、彼の表情は無意識のうちに緩んだ。 「なに弛んだ顔をしてるのよ?海が安全だって訳じゃあないのよ。」 「ああ、わかってるよ。」 いつも通りの彼女の様子に、ロイは心の底からほっとしていた。 二人が船に持ち込む荷物の整理と確認をして、肩に背負い始めた時、ルべスが軽快な足 音を遠くに聞いた。 「あ、戻ってきたみたいよ。」 気がついてみると、向こうの方からアムが手を振りながらこちらへ駆けてくるのが見えた。 そういえば、船は昼頃に出るはずであった。陽の位置はもう大分高くなっていた。二人は 乗り遅れぬようにと、急いでアムと合流し、乗船場へと向かった。 |