5. 「る、ルベス〜・・・。」 助けを求めながら少女に引っ張られていく彼を横目に見ながら、ルビエスはその場に留ま って店の中を見回した。 小さな店内に、様々な輝きを放つ鉱物が所狭しと並んでいる。おそらく、ここで採れたもの であろう。しかし、そのどれもが護符のように丸みを帯びた直方体に加工されているのはど うしてだろうか。 よく見てみると、細かい模様が描かれてあるものもある。 「・・・へぇ・・・。」 奥まったところに、鍵付きの木箱の中に厳重に保管してある鉱物があった。 こちら側がガラス張りになっていて、中の鉱物が見えるようになっている。 「・・・・・・。」 「それは斬光石じゃよ。ご存じないか?」 石に見とれていたルベスは、突然の声に驚いて振り返った。 「連れが中に入っておるよ。 すまんのう、孫が勝手に連れていってしまって。」 「・・・いえ。それより、斬光石というのは?」 言って彼女は、ケ−スの中の石を見つめた。 ・・・・・・全体は闇色だが、店のランプの明かりを受けて所々きらきらと小さく輝いている。 ―――まるで、夜空に瞬く星々のごとく。 「斬光石は神の石とよばれる、魔力を秘めた石じゃ。滅多に採掘されることがないために、 そう言われておるんじゃろうな。他に魔光石、光牙石と呼ばれる石があっての、それらを三 大奇石と呼ぶ。 ・・・まあ、我々石使いにとって、一生のうち一度は操ってみたい石じゃの う。」 「石使い・・・?」 ルベスが首を傾げると、杖をついた老人は彼女を店の奥に促した。 「ここで話をするのもなんじゃろうから、中でお茶でも飲みながらゆっくりしてゆきなされ。」 「・・・・・・じゃあ、お言葉に甘えて。」 陽のことが気になったが、ロイを連れ戻すことを優先させたルビエスであった。 一方その頃―――。 「あ、ここですよ。ウッタブド名物料理店チャスカ!・・・・・・あら?」 背後を振り返ってようやく、彼女はルビエスたちが付いてきていないことに気が付いた。 慌てて周りを見回す陽。 「ルビエスさん・・・?ロイさん・・・?」 ひと滴の汗が彼女の頬を伝った。 「・・・これって・・・・・・も しかして、迷子・・・?」 雑踏の中、陽の周りの時だけがしばし止まっていた。 「石使いという言葉を聞くのは初めてかな?」 案内された奥の部屋で、老人はお茶を出しながら言った。 「・・・ええ。」 彼女は石使いという言葉から想像の限りをつくしてみたが、どうにも釈然としなかった。 「私たち石使いは、石にある本来の力を引き出すことができるのよ。」 「本来の力・・・?」 彼女はロイの口に菓子 ・・・おそらく彼女の手づくりだろう・・・を押し込みながら言った。 「そう。例えば・・・オパ−ルは炎の力を持ってるし、サファイアは水、水晶は氷の力を持っ てるわ。他には、・・・そうね、ラピスラズリは昼、黒曜石は夜、ダイヤは時、ていうような感 じね。私たちはこれらの力を引き出してエネルギ−として利用することができるの。」 「へぇ〜。・・・・・・君も使えるの?」 少女は肘でロイをぐりぐりやりながら言う。 「私のことは、アムって呼んでくださいな、ロ・イ・様。」 その彼女の言葉に目を点にするルビエス。心の中でも、もはや何も突っ込めなくなってい た。 「それはともかく、もちろん使えるわよ。私も石使いだから。」 「・・・まだ見習いじゃがな。」 「・・・って言って、叔父さんは私の力を認めてくれないのよ。」 「二つ石のの混合技もまだろくに使えんくせに。」 膨れるアムに、老人は無情にもそう断言した。 「そういえば、お二方は旅の途中のようじゃが・・・」 「聞いてよ叔父さん、この人ライ様の息子さんなんですって!・・・こっちは、そのお供の方 の―――」 そこまで言って彼女は、ルビエスの名前を聞いていなかったことに気が付いた。 「ルビエスよ。ルビエス=カトゥス= レトロイダ。」 丁寧に名字まで名乗った彼女に、アムの反応はやはりそっけなかった。だが、老人の方 は違ったようだ。 「ルビエス・・・様、もしや貴女様は、フ−ジュ様のお嬢様ですか。」 「―――あ、えっと、それはそうなんですけど・・・」 何も答えないルベスの顔色を伺いながら、ロイは続けた。 「フ−ジュ様は行方不明で・・・ルベスが見つかったときには、もう書き置きしか無くて・・・」 「そうでしたか。それは申し訳ないことをお聞きしました。」 必死に頭を下げる老人に、ルベスは何も言わなかった。それが彼女の優しさだということを、 ロイは知っている。そんな彼女のことを、アムは同情とも怪訝ともつかない顔で見ていた。 「―――そういえば。」 沈んだ雰囲気の中に、ロイのあっけらかんとした声が響いた。 「陽さん、どうしたんだろう。」 |