4. ラインハルトから黒方向(北のこと)にかけては、低い山々が連なっている。 フレイン村はその山の谷間にある村であった。その山々のことをブンガ−山脈という。そ の中でも最も高いのはバ−ル山と呼ばれ、麓にはウッタブドという鉱山で有名 な町がある。 そして結局、そのウッタブドに3人が着いたのは闇の元素が世界を覆い始めたころだった。 上空からみると、明かりが点々とつき始めているのがわかった。 「随分大きな町だな・・・ラインハルトの城下とたいして変わんないよ。」 ロイの言葉にルビエスも頷く。 実際、ウッタブドは近くの町を2、3飲み込むような形で大きくなっていった町である。 ラインハルトの国土の大きさとさして変わらないため、国と呼ぶ人さえいる。ウッタブドが国 となっていないのは、そこに主、つまり王がいないからであった。 ヒポグリフは、陽の指示で町の外れに舞い降りた。 「ありがとう。」 彼女の言葉に頷くかのように一声鳴くと、夕日の落ちる空へいずこかへと飛び去っていっ た。 「もう日も暮れてきたから、宿を探さないといけないわね。」 取り合えず三人は町 中にある小さな宿に部屋を取ると、夕食を取りに町へ出かけた。 「それにしても―――」 ロイは首を巡らして町を眺めた。 「随分活気のある町だな〜。」 時間が夕食時のせいか、人々があちこちの店を出入りしている。 「ロイさんやルビエスさんは、どんな食べ物がいいですか?」 「う−ん、基本的にはなんでも好きだけどな〜。ルベスは?」 「私?私は・・・そうね、どうせなら、名物料理とか食べてみたいわね。」 「―――じゃあ」 二人の言葉に、陽は町の案内図の、ある場所を指差して言った。 「ここがいいと思うわ。早速行ってみましょ。」 場所は宿屋からそんなに離れてはいない。見合わせた二人の顔がわずかに綻んだ。 「ま、たまにはこういうのもいいんじゃない?」 ルベスの言葉に相づちをうつロイ。 「ウッタブドは山菜料理が有名らしいですよ。それからサルミっていう野鳥の焼肉入りのシ チューが・・・」 陽は周りの店を見回しながら、まるで町の案内人のように話を続けた。 「そうなんだ・・・ん?ルベス、なんだろう、あの店。」 気の散りやすいロイは、とある一軒の店を差してルビエスに言った。 「ちょっとロイ・・・・・・陽さん、あの・・・」 ロイを引き止めつつ、陽に声を掛けるルベス。しかし、陽は説明をするのに夢中になってい てルベスの話がまったく耳に入っていない。一人で話しながら彼女はどんどん歩いていっ てしまった。 「・・・まったく、ロイも陽さんもっ!」 仕方なく、ルベスは陽なら大丈夫だろうと、 引き返し、ロイの後に付いていった。 「いらっしゃいませ〜!」 鈴の付いた暖簾をくぐってロイが中に入ると、音を聞きつけたのか、奥から勢いよく女の子 が飛 び出してきた。年は、ロイとさして変わらないだろう。好奇心旺盛な視線をロイに向け 、彼女は店の説明を始めた。 「鉱物ショップ、ピットへようこそ!・・・ 服装から察するに、旅のお方ですか?」 「・・・うん、まあ。」 「へぇ〜、どこから来たんですか?ケプラザですか?それとも―――」 よほど店番が退屈だったのか、女の子はロイに話しかける。 その言葉を遮ったのは、鈴の音を鳴らしながら店の中に入ってきたルビエスだった。 「まったく、陽さん先に行っちゃったわよ。」 「―――あ、連れの人がいたんですか・・・。」 その声が落胆の色を帯びていたことに、二人が気付いたかどうか。 「ああ、ごめんごめん。ちょっと面白そうだったから。」 二人のやり取りを聞いていた女の子は、ロイの顔とその背中の槍とを見比べて、ふと、あ ることに気が付いた。 「ロイ・・・っていうことは、まさか、貴方はライ様の息子さんですかっ!?」 二人は互いに顔を見合わせた。 「そう・・・だけど、なんで―――」 わかったのか、という彼の言葉を遮って、彼女は言葉を続ける。 「だって、話に聞くライ様と似ていたんだもの〜。顔つきとか服装とか。ライ様の息子さんが 旅に出たってことは聞いてたし。それに、槍を背中に背負ってる旅人なんて、そうそう見か けないもの。」 「・・・そ、そう。でもなんで―――」 「そうだ!ここで立ち話もなんだから、中に上がってお茶でも飲んでいったらどう?よかっ たら、ちょっとした名物料理もごちそうしちゃうけど。」 「え、ええと・・・・・・その」 ロイは戸惑いながら、ルベスに意見を求める。 「あ、もちろんお供の人も一緒で構わないわ。ちょっと狭いんだけど、よかったらどうぞ。」 その少女の、半ば強引な言葉にはルベスも成す術がなかった。 あいまいに頷くと、彼女は喜び勇んでロイの腕を取り店の奥へと引っ張っていった。 |