2.

そして、彼に対して次のように答えた。

「あの御方とお前のあるべき世界は違う。お前はもとの世界に戻れ。お前のあるべき世界

へ―――」

レイドは溜 め息をついた。

「・・・それがエルフ式の話し方かい?少なくとも、シェルファ−はそんな話し方はしない。」

そう言った途端、レイドの周りにいたエルフ達は動いた。彼らは魔力による光球をレイドに

突きつけた。

「この距離ならば、交わすことはできまい。おとなしく、村から出てもらおう。」

「・・・・・・。」

これにはさすがのレイドも従い、彼はエルフ達に誘導されながら村の出口へと向かった。

「・・・・・・店に飾られていた絵を見た。あれは、彼女は君達の主かい。とするとシェルファ−

は・・・」

「無駄口を叩くな。―――去れ。」

森の中をしばらく歩くと、エルフたちはその場に彼を置いて風のように去っていった。

「いったい彼らは何 を・・・」

一陣の風が、それに応えるかのように吹き抜けた。




彼が着いたときには既に魔法陣は完成していた。普通の魔法使いであれば半日は掛かる

というシロモノを、陽のわずかに傾く間に完成させたというのだろうか―――。

神官はというと、そばの木立にもたれて眠っている。が、レイドが近づいた途端、目を開け

て問いかけた。

「シェルファ−ナはエルフの里か。奴らが余計なことを始める前に、彼女を助けなくてはな。」

ヴェレヌの言葉にレイドは絶句したが、相手が神官だということを思いだし表情を改めた。

「場所は分かっている。」

案内をしようと、彼は歩き出そうとしたが、神官には何か策があるのか、魔力集め始めた。

続いて、地面に描かれた魔法陣がぼんやりと輝きだし、ヴェレヌが詞を呟いた。

「ここへ来い。先ほど行った場所を思い浮かべろ。私は、転送のための呪を唱える。」

「分かった。」

神官の指示通り、レイドは魔法陣の上で目を閉じ、エルフの里をイメ−ジしてみる。

森の中にひっそりとある、花々の香る異郷―――。小鳥のさえずり、穏やかな風。とその

時、神官の呟きが彼の耳に入った。

「・・・ディ・ダルト」


そして次の瞬間、彼等の姿はその場から忽然と消えた。




「・・・貴方達はいったい何者なのですか・・・?」

近くにいるエルフに、シェルファ−ナは聞いた。

何かを思い出そうとして目を閉じた後、違和感を感じて目 を開けてみると、彼女は見知ら

ぬ場所にいた。

「私は貴女様をお守りする者です。私達は、長い間貴女様を捜しておりました。貴女様のお

母様がお亡くなりになって50年―――本当に長い時でした。」

エルフの話していることの意味が分からず、彼女は戸惑った。

「どういう・・・ことですか?」

シェルファ−に背を 向けていたエルフは振り返った。

その顔に、彼女は妙な懐かしさを覚えた。

「貴女様は、我等の主フェルディ−ン=シャド−様のお嬢様です。我々の、最後の希望な

のです。」

男の額にあるサ−クレットの宝石が、不思議な色を放った。

「それは、どういう・・・」

「我々のところへ、戻ってきてください。シェルファ−ナ=シャド−様―――」

ロウソクの光だけが便りの暗いその部屋の中で、彼女は意識を失った。




移動した二人が村を探索していると、案の定闇エルフの奇襲にあった。

風を切って飛んできた矢の弾き返される音が、戦いの合図となった。

「―――来た。」

レ イドの剣が矢を払い落とし、神官の”黒いもの”が反撃のために宙を舞う。

「ここにはシェルファ−はいない。きっとどこか別の場所だ。」

二人は互いに背を向 け、次の攻撃に備え武器を構えた。

「援護しろ。」

低い声でそう命じたヴェレヌは次の瞬間には、その場で印を結び呪を唱え始めていた。そ

の彼に集中して放たれる矢を叩き落とし、なおかつ反撃をすることとなったレイドは必死だ

った。下手をすれば、レイド自身が矢の餌食となる。もはや彼の耳には、風の音しか入ら

なかった。

「ディ・アマルミダ!」

神官の発した詞に、彼の右手から緑色の光が放たれ、一人の闇エルフをとらえた。

「―――退け!」

どこからともなく聞こえた命令 に、闇エルフたちはすぐに撤退を開始した。

「逃がすかっ!」

光に覆われた闇エルフをレイドは執拗に追いかけた。


「―――深追いはもういい。」

神官の言葉に手を止めたレイドは、次の瞬間には闇エルフを見失っていた。

「わかったのか、場所は。」

「―――ああ。」

そう頷いたヴェレヌの顔が、彼には妙に険しく見えた。右手を見つめたまま、それ以上なに

も言おうとしない。

「行こう、ヴェレヌ。」

無言で頷いて詠唱をはじめる神官の横顔を、彼は怪訝な顔で見ていた。

「ディ・ダルタ!」

神官の詞に、まだ地面に残っていた先ほどの魔法陣が発光した。どうやら、魔方陣ともども

あの場から移動し、神官は移動呪文のための魔方陣を描いていたらしい。




―――刹那、彼等の姿は忽然と消えていた。





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