| 光と音と、衝撃波。 その全てが、私にことの次第を伝えた。 ひと足先に着いたタプラスは、既に矢を弓につがえ、何事かをつぶや きながら目標を狙っている。 それは、翼の生えた一匹の大きな狼であった。 先に駆けつけたジェニライが、術で牽制している。 ・・・どうやら先ほど見えた光や衝撃波は、彼女の放った術によるも のらしい。 彼女の立っている地には、魔法陣が淡く光っていた。 私は辺りを見回して、声を上げた人物を探した。 戦いの場からさして離れていない所に、二つの影が見える。 獣を刺激しないように、影に向かって私は歩みを進めた。 金髪の女が、木にもたれる男を介抱している。 そして、傍らに怪しく輝く剣の赤い玉。 ―――リオン。 いったい何があったのだろう。 悲鳴を上げたのは女の方である。 けれども、その女が怪我をしているようすはない。 そして一方のリオンの方も、負傷しているようには見えない。 私は、二人に駆け寄った。 「リオン様が、魔剣のせいで動けなくなっていたので、私が・・・」 事情を問 う私に、女は慌てた口調でそう言った。 リオンは、抜き身の剣を右手に持ったまま、樹の幹にもたれていた。 目を閉じたまま、微動だにしない。 女の揺さぶりにも、 全く反応しない。 まるで、何かに縛られているかのように。 どうしたらいいものかと考える私の耳に、獣の咆哮と、ジェニライの警 告が入った。 「気をつけて、 そっちに向かってるわ!」 急いで振り返ると、目の前に傷を負った獣が迫ってきていた。 ―――そんな・・・! 横に跳べば、交わすことができるかもしれない。 けれども、リオンが――― 『・・・彼に伝えて。お願い。』 クリスの言葉が思い出され、私はその場に踏み留まった。 そして、少しでも衝撃に耐えようと、タプラスからもらったばかりのグ ロ−ブを構えた。 後ろでは、やはりその場に留まった女がリオンのことを揺さぶってい る。 獣の後ろに、追いかけるジェニライとタプラスの姿が見えたが、間に合 いそうにはない。 「―――リオン様っ!?」 女の語尾に違和感を覚えた、その次の瞬間であった。 ―――り・・・オン・・・? 構えていた私と牙をむきだしにした獣。 その間にまさしく割っていったのは、他でもないリオンだった。 その、右手にある剣の刀身が赤く光っている。 「――― っ!」 気合一閃、剣を払うリオン。 そして、間髪を容れずに獣をその剣で貫いた。 「大丈夫っ?怪我はない?」 駆け寄るジェニライの言葉に頷きながら、座り込 んだ私はリオンを見上げた。 彼は、何事もなかったかのように露を払った剣を鞘に収めると、私の 方を一瞥してどこかへ行ってしまった。 「―――平気?」 我を忘れていた私に声をかけてくれたのは、タプラスだった。 差し出された彼の手を取るのは、これが二度目である。 私は立ち上がり、スカ−トについたよごれを払うと、タプラスにジェニ ライとともに樹郷へ戻るつもりだということを告げた。 了解の意で彼は頷くと、自分はもう少し探索をしてから帰ると言って 木々の向こ うへと消えた。 残された私と女は、ジェニライとともに樹郷へと戻っていった。 ・・・・・・ next page>> |