| 帰る途中、私はジェニライにリオンは一人でも大丈夫なのかと尋いて みた。 「多分、大丈夫だと思うわ。樹海には彼、何度も入ったことがあるし、 他にも探索している樹民がいるはずだから。」 ジェニライのその言葉を心に言い聞かせ、私は樹郷へと歩みを進め た。 結局、あのあとリオンは無事に探索から戻ってきた。 夕食の席では、もっぱらリオンのことが話題となっていた。 「あのときのリオン様、カッコよかったわ 〜!」 私は樹民たちにあいまいな返事を返していたが、それを皆はひかえ めな性格だとったらしく、うらやましがりながら何度も肩を肘でつつか れた。 私は目で 何度もリオンの姿を追ったけれども、彼の姿は見当たらず、 またいつもテーブルの周りをせかせかと動いているジェニライの姿も 見えなかった。 次の日、私はジェニライと探索に出かけようと思い、支度を済ませて すぐに広場へと向かった。 昨夜遅くに雨が降ったせいか地面はだいぶぬかるみ、冷えた空気 にもやがかかっていた。 一歩歩くたびに泥と化した土がブーツに跳ねた。 とても滑りやすかったが、慎重に歩けばどうということもなく、無事に 広場へ抜ける道にたどり着いた。 ・・・けれどもそこで私は安心してしまったらしく、次の瞬間足を滑らせ てしまった。 ―――っ!? そのまま泥しぶきとともに尻餅をつきそうになった私を、誰かの手が 後ろから私の腕をつかんで持ち上げた。 「すべりやすい、気を付けろ。」 聞き覚えのある声に背後をふり返ると、革の袋を肩に下げたリオン がいた。 「ジェニライのところへ行くのか?」 私が頷き礼を言うと、リオンはそのまま広場へと歩きだした。 数歩遅れて私も歩きだし、リオンの横に並んだ。 そして、クリスに頼まれていた伝言を彼に伝える。 「―――クリス?ああ、知っている。親友の幼馴染みだ。」 わたしは彼に、どうして国に戻らないのかを聞いてみた。 「・・・いろいろ事情がある。君こそ、どうしてこんなところに来た?」 他の樹民に話したように、リオンにも樹海へ来た理由を話したが、彼 は他の樹民とは少し違った反応を示した。 「―――なるほど。だからか・・・。」 その彼の言葉がとても気になったが、聞いても答えが返ってきそう にはなかったので、敢えて聞くということはしなかった。 慎重に広場へ向かって歩いていると、誰かの言い争うような声が聞 こえてきた。 女の声。 しかも、どことなく聞き覚えがある。 広場に近付くにつれ、その声は大きくなる。 「―――どういうつもりなの、いったい!?」 どうやら声の主はジェニライらしい。 あのジェニライが、あんなに大きな声をだしてどうしたのだろうと、私 はリオンを振り返った。 しかしリオンの方は、もう慣れているといった風情で、特に驚いた様 子はない。 口を開きかけた私をリオンは制して、広場へと促した。 やっとたどり着いた広場には、ジェニライと――― 特異な衣装をまと った男・・・フェンリルがいた。 どうやらジェニライが一方的に話をしているらしい。 対するフェンリルは、ジェニライに押され気味でただ呆然と立ち尽くし ているように見えた。 そして広場に入ってきた私たちに先に気付いたのは、フェンリルの方 だった。 「・・・・・・」 彼は何事かを呟くと、ジェニライの制止も聞かずに風のように走り去 ってしまった。 ・・・・・・ next page>> |