そして私の思考はタプラスの到着で途切れた。

「これこれ。大きさが合うといいんだけど・・・」

私は、所々に金属のついたグロ−ブをタプラスから受け取り、自分の

手にはめてみる。それは私の手にちょうどよい大きさだった。

「よかった。取ってきたかいがあった。・・・じゃあ、探索に行こうか。も

しかしたら、スタ−・サボテンの群生地を見つけられるかもしれない。」

タプラスのその言葉にうなずき、私たちは樹郷を出た。



樹海に入って・・・といっても、樹郷も樹海の中なのだけれど・・・半時

ほどたった頃。

トンネルのようになった木の根をくぐりながら、私はタプラスにここへ

来た目的を聞いた。

「・・・うん。僕は、姉さんを治すために、こ こへ来たんだ。もちろん、

樹海の秘宝にも興味があったけど。」

私はタプラスに、皆が言う”秘宝”について聞いてみた。

「さあ・・・本当かどうかしらないけ ど、持つもののあらゆる願いをか

なえるとも、あらゆるものを癒すともいわれてるらしい。だから、もしそ

んなものがあるのなら、僕はそれを手にいれて姉さんを治すんだ。」

微笑んだ彼のその顔には、強い意志が感じられた。

タプラスは、姉思いな弟なのだろう。私には兄弟がいないから、その

気持ちがよく分からなかったのだけれど、それはとても素敵なことに

思えた。

私がそう言うと、彼は照れ笑いをした。

「そうかな。・・・ありがとう。」

それから少し歩くと、水の流れるような音が聞こえてきた。

タプラスの後を歩いていくと、いよいよ音は近くなった。


―――すてきな所。

そこは、森のなかに ひっそりとある湖のような場所だった。

ような、というのは自分が湖を見るのが初めてだからである。でも、

本で見たものとは、何かが違う。

「ああ、ここは水源だよ。水が生まれる所。僕の故郷もここから生ま

れたんだ。」

私は、縁に近づいて水中を覗いてみた。

堆積した白い砂や泥が、そのところどころで小さく、そして絶え間なく

吹き上げられている。

「そこから新しい水が出てくるんだ。」

タプラスはしゃがみこみ、がさごそと自分の荷の中から袋を取り出し

た。その袋を使って水源の水を汲み上げた。

「ここで毎日、水を汲むんだ。この水はどこの水よりも澄んでいるから

体にいいんだ。・・・きっと姉さんにも。」

荷袋に丁寧にしまいながら、タプラスは言う。

私は、グロ−ブを外して水のなかに手を入れてみた。

ほどよい冷たさで、それは私の両手を包みこんだ。そのまま手のひら

を器のようにして、水を汲んでみる。樹冠からもれる陽光に、それは

美しく煌いた。

それをそのまま飲んでしまうのは、なんだか惜しいように思えた。

「水源の水はどう?」

タプラスにそう尋かれ、私は水に口をつけた。


―――冷たいという感覚はあるけれども、何の味も感じられない。

冷たい空気が流れ行くように、水は自然に私ののどを通っていった。



ただ、心地よい。



そんな私の返事を聞く前に、タプラスは立ち上がった。

「じゃあ、そろそろ行こうか。樹海は広いし。」

彼の言葉に頷き、自分のグロ−ブを手に取ったとき、何者かの声を

遠くに聞いた。いや、正確にはその声は悲鳴に近い。

振り返ると、タプラスは表情をひきしめて、声のした方に耳 を傾けて

いる。

―――何があったのだろう。

「君はここにいたほうがいい。きっと魔物が出たんだ。」

―――助けにいくのだろうか。だとしたら、人数は多い方がいいかも

しれない。戦うことはできなくても、傷を負った人を介抱するくらいの

ことは、私でもできる。

私は持ち合わせていた袋に水を汲むと、タプラスの後を追った。





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