| 頭に生えた2本の角に、特異な衣装。 樹海に来て、初めて出合った男。 そういえば、昨日のパ−ティ−に彼 の姿はなかった。 私は彼に、名を尋ねた。 「私の名はフェンリル。訳あって樹郷に留まっている。」 彼・・・フェンリルは、抑揚のない声でそう話した。 「―――人がここへ来る理由は、人の数だけある。お前にも、私にも、 そしてリオンにも。」 フェンリルは私の横を過ぎながら、そう言った。 彼の言った言葉に、私は自分の思考が読まれているような、そんな 妙な感じを覚えた。 彼はそのまま背後の角を曲がっていった。 私はまだ聞きたいことがあったので、彼を追った。 しかし、既に彼の姿は家々の影に消えていた―――。 そしてそこには代わりに小さな男の子が座っていた。 年は、私よりも若いだろうか―――? 彼は私に気付くと、 はっとして身をこわばらせた。 「―――ここまで来ちゃったの・・・?・・・僕でなきゃだめなの?」 脈絡不明の少年のその言葉に、私は首をかしげた。 そし て、私は君とは今はじめて会ったばかりだということを彼に話し てみた。 「・・・本当に、クレアじゃないの・・・?」 ―――クレアという名前には、聞き覚えがない。 私が樹海に来た目的を話してみて初めて、彼の瞳からおびえの色 が消えた。 「・・・僕、ロキっていうんだ。別に、この森にある宝が目当てで来た わけ じゃないよ。ただ、ここにくれば大丈夫だと思ったから・・・」 ―――私には、大丈夫だという言葉が気になった。 「僕・・・人柱なんだ。」 私は、怪訝な顔をした。ロキは続ける。 「父さんと母さんに、逃げろって言われて・・・。でも、災厄は僕をどこ までも追いかけてくる。」 私は、クレアとは誰なのかと聞いた。 「クレアは、僕の姉さん・・・血は繋がってないけど。」 彼はそれ以上はなにも言わなかったが、その瞳に称えた光は、言葉 以上のものを私に伝えた。 「お姉ちゃんは、どうして探索に行かなかったの?」 私が黙っていたせいか、ロキは話題を変えた。 私は、独りで樹海に来れたわけではない。途中で遭遇した魔物は ク リスが倒したのだ。力のない私が、探索などをするのは皆の足手ま といになるだけである。 そのままを私はロキに伝えると、彼は微笑んだ。 「お姉ちゃんて、 すごいね。」 その言葉の意味がよく分からなかったが、私は思わず会釈した。 ロキの微笑みは、そんな笑みだった。 彼とはそこで別かれて、私はまた樹郷を散策 した。 陽はまだ高い。 森の中が紅く染まるまで、樹民たちは戻ってはこないだろう。 いくら散策しても、辺りに人の気配はしない。 吹く風が、私の頬を冷たくかすめた。 延々と続く家々の風景に飽きた私は、ジェニライのいる広場に戻るこ とにした。 そして戻りかけた私を待っていたのは、突然の出会いだった。 ・・・・・・ next page>> |