樹民たちの朝は早い。

私が目を覚ましたときには既に、ジェニライは仕度を済ませていた。

「目が覚めた?みんなは探索に行ったけど、貴女はどうする?」

私は、樹海のことはまだなにも知らず、おまけに自分の身を守ること

もままならないということを彼女に話した。

「じゃあ、私に付いてくるといいわ。仕度が済んだら、広場に来て。そ

こで待ってるわ。」

そう言うと、ジェニライは外に出ていった。

私は、乱れた髪を手櫛で整え、荷物の入った皮袋を手に取ってドア

に向かおうとして、テ−ブルの上に朝食が用意されていることに気が

付いた。

急いで食べて食器を洗い、私は家を出ていった。




広場に行こうと通りを曲がって、私は独りの男に出合った。

昨日会った男ではない。

後ろに結わいた青い髪に、透き通った紫色の瞳。

その瞳が、大きな一振りの剣を見つめていた。

そして私は、その姿に心当りがあった。

私が近寄ると、男は気付いて私に話しかけた。

「昨日来たという新入りか?」

私がそうだ、と答えると、ふいに男が持っている大剣に埋め込まれた

宝玉が光った。

―――否、それは眼球のように動き、その視線を私の方に向けたよ

うに見えた。

「ジェニライなら広場に向かった。用があるならそこへ行くがいい。」

彼の名前を確かめようとしたけれども、彼は終始視線を私に向けな

かったので、私は諦めて広場に向かった。

「そ う、彼の名前はリオンよ。でも、どうして知っているの?」

私は樹海へ来る途中、彼と同じ国の戦士であるクリスに助けてもら

ったことなどをジェニライに話した。

「ふうん。彼、自分のことは何も話したがらないから、そういうことは

知らなかった。リオンは探索に行くこともあるけど、たいていは剣を傍

らに置いてあそこにいるの。みんなからはリオン様って呼ばれている。

なんでも前に探索に行ったときに、魔物に襲われた人たちを助けた

とか。腕は確かよ。」

と彼女は私を振り返った。

「どうするの?樹郷を歩いてみる?それとも私と探索へ行く?」

私は、もう少しリオンと話してみたいと思い、ここに残ることにした。



私は先ほどリオンがいた場所に戻ってみたけれども、リオンの姿は

見られなかった。

仕方がないので、私は足の赴くままに樹郷を歩くことにした。



―――それにしても。


家々の間を通りながら、私は考え事をしていた。



―――こんなにたくさんの人がいて、木々は迷惑じゃないのかな・・・。

「俺たちはこの樹海のど こかにあるっていう”宝”を探してるんだ。

なぁに、いつか見つかるさ。」

昨日のパ−ティ−で、樹民たちはそう言っていた。

あるかどうかもわからない宝を探すため、日々探索をしている―――

それは果たして正しいことなのだろうか。


そしてリオン。


彼はなぜ国の騎士団長を投げだしてまで樹海に来たのか。

ふと、誰かの視線を感じて、私はそちらを振り返った。







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