| 家は想像よりも多く軒を連ねていた。 しかし、どの家からも人のいる気配 はしない。 ―――これは、幻なのだろうか。 そうとも考えてみたけれども、家の外壁に触れる私の左手の感覚は 間違いなくそこに存在する家の丸太の感触を伝えている。 歩いていくと、また広場のようなところに出た。 そしてそこには、先客がいた。 ゆるやかなウェ−ブのかかった碧い色の髪。 抜けるような白い肌。透き 通る緑色の双眸。 夕闇に溶け込む月のように、彼女は広場の傍らに座っていた。 私は彼女に近づいた。 「もう、そんな時間なのね。」 彼女はそう言って、私を見上げた。 その顔に驚きの色が現れたのは、それからすぐのことだった。 「あ、ごめんなさい。貴女・・・見かけない顔だけど。」 私は、ここがどこなのかを尋いた。 「ここは、樹民の住む樹郷よ。貴女、新入り?」 取り合えず私は、今日この樹海に入ったことを彼女に話した。 「そう。もうすぐみんなが探索から 帰ってくるはずだから、それまで待 っていてちょうだい。新入りを祝うパ−ティ−を開くわ。」 私は急な話の展開に付いていけず、取り合えず彼女の言う皆を待つ ことにした。 その夜は賑やかだった。 あのあと半時ほどしてから、数人の軽装備をした男女が広場にやっ てきて、彼女・・・ジェニライという名前らしい ・・・に何も見つからなか ったというようなことを話した。 どうやら、探索の結果を彼女に報告しているらしい。 それからまたしばらくして数人の男女が広場にやってきて、数時後 には広場に人が溢れんばかりとなっていた。 ジェニライは私を招いて、広場に集まった人たちに紹介してくれた。 そして、宴が始まり、私は 新しい樹民のひとりとして樹民たちから歓 迎された。 話をしてみると、樹民たちからはこの世界の様々なことを聞くことが できた。 それほど様々なところから、 人々が樹海に来ているということは私を 驚かせた。 樹民たちは皆親切で、ここでの生活についても色々と教えてくれた。 そして彼女、ジェニライが最も古くからいる樹民であるということを知 った。 彼女は、だいたい20年くらいこの樹海にいるらしい。 らしい、というのは彼女が自分のことをほとんど話さないからである。 樹海で生まれたのではないか、とも言われている。 それはともかく、ジェニライは樹民の中でもっとも信頼されていて、慕 われているというのは確かなことだった。 彼女についての悪い話は聞かない。 「樹海で暮らす気があるんなら、ジェニライに言うといい。いろいろ教 えてくれるよ。」 私は少しの間、樹海で暮らすことに決めた。 ・・・・・・ next page>> |