| ―――・・・ここは、いったどこだろう? 閉ざされた瞼の向こうの世界は、わずかに明るい。 次に感じたのは、横になっているという感覚。 ―――私、どうしたんだろう・・・? ゆっくりと、重たい瞼を開ける。 自然と眉間に力が入ってしまう。 目の前には、見慣れた天井があった。 そこは、ジェニライの家の寝室で、ここに来てからずっと借りていた寝室 だった。 どうしてこんなところにいるんだろう、そう思いながら私は上半身を起こ した。 そして、そこにジェニライを含めた数人の人がいたことに私は気がつい た。 「気がついたのね!よかったわ。」 「お姉ちゃんっ!」 「体は大丈夫かい?どこかまだ痛む?」 ジェニライに、ロキ、タプラス・・・。フェンリルやリオンの姿も見えたような 気がした。他にもたくさんの樹民たちが、私の前に詰め掛けたので、一 番近くにいたロキは押しつぶされそうになっていた。 けれども、そんなことはおかまいなしに、ロキは私に初めての笑顔を見せ てくれた。 ―――でも、どうしてここにいるんだろう・・・? ぼんやりと、何があったのかを思い起こしてみる。 たしか、聖域に着いて・・・ 大きな木に登っていって・・・ 広場があって・・・ 不思議な石があって・・・・・・ ・・・・・・樹から落ちたんだ。 「どこか痛くはない?レイムートの術でどうにか地面に落ちる前に支える ことができたの。」 ―――どこも痛くは、ないけれど・・・ レイムートさんにお礼を言おうと、見回してみても彼女の姿は見えなかっ た。その私の様子を見てか、タプラスが答える。 「姉さんは、帰る仕度をしてるんだ。僕も、もうすぐここを出る。もう、”秘宝” は見つかったからね。」 ―――秘宝・・・? すこし首を傾げ、そして私は”それ”をあの時落としたことを思い出した。 「秘宝なら、そこにおいてあるわ。本当、綺麗・・・」 ジェニライが示す方向・・・テーブルの上に、陽の光を受けて七色の色彩を 放っていた。部屋に出入りする誰もが、その虹彩に視線を奪われていた。 「貴女は、これからどうするの・・・?」 ぼんやりと見とれていた私を、ジェニライの声がもとの場所に引き戻した。 どういう意味かと答えあぐねていると、ロキが先を話してくれた。 「僕はまだここにいるけど、みんなは、自分の街に帰っちゃうんだって。」 彼の声はやや寂しそうだった。 そう、秘宝が見つかった今、皆がここにいる必要はなくなったのだ。 ―――私も、帰ろうかな・・・。 呟いた私に、ロキはしがみついた。その重さに、私の体は仰向けに倒れこ んだ。そのまま、彼は顔を毛布にうずめている。 私は、ロキの手をそっと握った。 その手の冷たさに、一瞬手を引きそうになったが、どうにかその場にとどめた。 ―――必ず、遊びに来るから。 ロキは顔をうずめたまま、大きく頷いた。 ―――今度は、いろんな世界の話をしてあげるから・・・だから、待っていて。 私は、天井を見上げた。 あっという間に過ぎてしまった樹海での日々・・・。 明日か明後日にでも、他の住民とここを出ることになるだろう。 でも、その前に・・・ 私には、どうしてもやっておかなければならないことがあった。 ・・・・・・ next page>> |