| ぼんやりとした明かり――― それが何なのかに気がついたのは、足場が不安定になってからのこと だった。 ―――崩壊の序曲。 ”秘宝”のあった台の上が、一定の間隔で光り始めていた。 それも、振動が大きくなるにつれて、強く、強く・・・・・・ 私は、この”秘宝”が異変の原因だと気がついて咄嗟にそれを元の場所 に戻そうとしたが、足元の揺れに体勢を崩してしまったためにそれは叶え られなかった。 取り落としてしまった”秘宝”を、私は再び手にとってその場から離れよう と立ち上がった。 ―――無理だわ、歩けない・・・ もはや両手をつかなければ、私は自分のからだを支えることができなくな っていた。 そして私は、もうひとつの異変に気がついた。 手をついている地面が、ひび割れ始めていた。 私のいる場所だけでなく、それは頂上全体に広がっていた。 ―――早く、逃げないと・・・ けれども、足元はなかなか定まらず、四つん這いになって進んでいく速度 は、亀のように遅い。 皮袋や”秘宝”は、引きずって運ぶしか他に方法はなかった。 けれども・・・ 目の前の地面が大きく割れて、その反動で私は大きく振り回された。 咄嗟に木の根を掴んだ私は、そのまま身動きが取れなくなってしまった。 ・・・足は宙に浮いていて、全体重が両腕に掛かっていた。 このまま手を離してしまえば、そのまま下へ落ちてしまう。そして、助かる ことはないだろう。 私は、両手に力をこめた。 身体が持ち上がらない。 もう一度。 やっぱりだめ・・・ ふと手元を見上げると、一緒に投げ出されたザックと、”秘宝”が近くに転 がっていた。 どちらもすぐ近くにある。 手を、伸ばしたい・・・ また、世界樹が揺れた。 まるで、私を振り落とそうとしているかのように。 私は右手を、今にも落ちそうになっている荷物のほうに近づけた。 あと、少し・・・ けれども、どちらも手に取ることはできなさそうだった。 左手だけでは、自分を支えきれない。 ふと、私は先ほど拾い集めた赤い実のことを思い出した。 あの、ひとつひとつが”命”なのだ。 この高さから落ちてしまったらきっと、砕け散ってしまうことだろう・・・ ―――あの袋の中には、命がある。 私は、麻袋の方に手を伸ばす。 掴んだ手はむなしく空を切り、皮袋は今にも落ちそうなほどに傾き始めて いた。 もう一回・・・ 伸ばした右手は、落ちた袋をしっかり掴むことができた。 でも・・・ 新たに加わった重さで、私は左手を滑らせてしまった。 ―――ああっ!! いままでいた場所の光景が、ぐんぐん遠ざかっていった。 袋に引っ張られるように、私の身体は落下する。 ―――みんな・・・ごめんね・・・・・・ 下からの強い風を受けながら、私は堅く、瞳を閉ざした。 ・・・・・・ next page>> |