広場に向かってみると、皆がそこにいた。

私の姿を認め、ジェニライが、リオンが、タプラスが・・・皆が私に駆け

寄った。

「どこへ行っていたの?皆心配してたのよ。」

皆に詫び、聖域に行っていたのではないのかと、ジェニライに聞いた。

「あれは、どうやら間違いみたいなんだ。」

タプラスががっかりしたような口調で、そう私に報告した。ジェニライ

が、それに詳細を付け加える。

「えぇ・・・スターサボテンの群生してる、とても素敵なところだったん

だけど、調べてみても何も見つからなかったの。」

その彼女の言葉に、私は先ほどまでいたところを思い出していた。

―――スターサボテンの群生・・・。

「それよりも、貴女はどこへ行っていたの?」

どう説明したらいいのかわからずに口を濁していると、彼女はややむ

っとした表情で言った。

「ひとりで探索するのは構わないけど、広場に戻る時間を考えて行っ

てよね。皆、疲れているんだから。」

私は再び謝り、聖域に行ってきたということを告げた。

「―――聖域へ・・・貴女が?」

皆が半信半疑な顔をしているのも、無理のないことである。私は、聖

域に着いたときのことを、詳しく話してみた。

光を放つ植物のこと。

フェンリルに出会ったこと。

トンネルをくぐったこと。

その先に、とてつもなく大きな一本の樹があったこと。

そしてそこに、秘宝があるということ。

「でもどうして、君は引き返してきたの?」

タプラスの言葉に、私は素直に自分の無力さを告白した。そして、皆

と一緒に行きたかったということも。

「わかったわ。明日、皆でそこへ行ってみましょう。今日はこれで解

散。各自休んでちょうだい。」



その日の夜は、とてもゆっくり過ぎていくように感じられた。なかなか

眠れなかった私は、ベッドの上で夜が開けるのをじっと待っていた。


どのくらい経ったのだろうか。

ふと私の耳に、ドアの静かに開く音が届いてきた。

この家に寝泊まりしているのは、ジェニライとロキと私だけ。災厄に襲

われた ばかりのロキが、外に出ていくことはまさか無いだろう。

私はこっそりと、ジェニライの部屋に行ってみた。

やはり、部屋は無人だった。

彼女はいったい、何処へ行ったのだろう?

・・・階段を降りて、ドアの外の様子を伺ってみたが、誰もそこにはい

ないようだった。私もまた、ドアをゆっくりと開けて外へ出てみた。音

を起てないように、私は そっと歩きだした。

―――ジェニライは何処へ言ったのだろう、広場だろうか。

歩みを進める私は、樹郷の・・・いや、樹海の様子が、いつもと違うこ

とに気が付いた。

夜鳥や虫たちの声が、しないのだ。

樹々は、不自然なくらい静かに佇んでいた。


広場の近くの茂みまで来て、私は足を止めた。誰かの話す声が聞こ

えてきた。

「これで本当に、終るのね・・・?」

懐疑的なその意見は、おそらくジェニライのものだろう。

そこに、別の物静かな声が聞こえてきた。

「世界樹が、彼女を認めた。私のせいではない。」

―――彼女、というのは、自分のことなんだろうか?

二人の会話は続く。

「私が案内する。その方がおそらく早いだろう。」

「そうね・・・それで、貴方の主はどう思っているの?」

「まだ、わからない。」

「・・・・・・随分人がここへ来たわ。」

語る彼女の声は、とても重い響きを含んでいた。

「―――主に代わり、詫びる。」

無味乾燥とした男の・・・フェンリルの声が、ジェニライに謝罪の意を

告げた。

「いいわ・・・これで樹海が再び平穏になるんなら。」

私には、彼女の言葉の意味が良く分からなかった。

「やっと・・・終るのね」

家に戻った後も、彼女のその言葉は私の脳裏から離れなかった。





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