【無心】
| もう、手遅れかもしれないが 今頃自分と言う自我の脆さを知った。 それがわかった瞬間 世界が白と黒の二色だけに見えた。 この世の何もかもが偽善で 人の話すことすべてが欺瞞に思えた。 ならばなぜ 自分は真実を語ろうとしなければならないのか。 なぜ 楽しくもないのに楽しいフリをしなければならないのか。 苦しいほど悲しいのに笑わなければならないのか。 私にはわからなくなった・・・ ―――それが、私から笑いが消えた理由。 わからない? |
【渦の中で】
| 何もかもが、悪いほうに見えて 何もかもがむなしく思えて 自分なんていないほうがいいんじゃないかなんて思ってしまいます。 ・・・事実ではないのかと自問する自分がいて、 否と答えられない自分がいます。 傷は相当に深いようです。 ・・・本当に、私の生きる価値はあるのでしょうか? |
【望むものは・・・】
| すべてのことが、私を絶望させ すべての人が、私を失望させ けれどもすべての・・・に、私は責望する おそらく私は、希望を見出すことはできず ただの光のひとかけを瞻望し 私は渇望する 望みしその果てに――― |
【ガラスの心】
| 苦しくて 苦しくて 苦しくて・・・ 私は虚空(そら)を見上げた 空はとてもきれいに青く澄んでいて 雲ひとつなく 私の目の前に広がっていました 私は どうにもたまらなくなって 持っていた剣で 切り裂きました なにかが砕け散って 私に降りかかりましたが 空は蒼く広がるばかりでした ―――ああ・・・ 砕けたのは、私の心だったのでしょう・・・ |
【闇の中】
| 近づいているのか 遠ざかっているのか・・・ 見えてきているのか 閉ざされているのか・・・ わかっているのか まだ知らないのか・・・ 交差したのか すれ違ったのか・・・ ―――終焉なのか これがはじまりなのか――― 愚かな私には、永遠にわからないのだろう・・・。 |
【決別の心】
暗き砂塵に阻まれし視界 風に流されて進むのには疲れた 時には流れに逆らうも必要であろう 踏みとどまりてめぐる視界に 風が震え 己が四肢に波打ち消える さあ、今こそ 内なる言葉に耳を傾け 内なる力に身体を預け 内なる想いに心を任せ ―――真実を見定めよ |
【自害の刻】
この感覚は何か・・・ 虚空に浮かぶ紅き月を遠くに見つつ、ぼんやりと私の思考は巡る。 黒き空に映える月が払う雲影は、私に変わりようのない時の流れを伝え ただよう風が纏う土の香りは、私に繰り返される命の息吹を伝え 風に揺れる前髪から除く銀光は、私にあるがままの己が姿を見せつける。 突きつけた短剣の切っ先が、自身の喉笛に冷たく触れる。 瞳を閉じると、鮮やかな赤い色が視界を占めた。 わずかに開けた口から出入りする空気は、妙に乾いていた。 ・・・私は、消えるのだろうか。 こうすることで、私は消えてどこへ行くのだろうか。 私は、風に流されて消えていくのだろうか。 私は、時に流されて消えていくのだろうか。 私は、人に流されて消えていくのだろうか。 私は・・・ 己に流されて消えていくのだろう。 |
【旅路】
―――私は、砂漠を歩いている。 ただ、ひたすら 前を見つめて、振り返らずに。 どれほどの距離を歩いてきたのか、それすらも忘れた。 ただ、灰色の砂漠を 私は歩いている。 何を、私は求めているのだろう。 果てに見える街も、麗しのオアシスも、かの人影も すべてが蜃気楼と消えていく。 私は、何を探しているのだろう。 この果てなく続く砂漠は、 いつから始まり、そして、終わりは・・・? 迷宮を彷徨うのと似ている。 唯一つ違うのは、視界は限りなく開けていること。 この不毛の地を、私は歩き続ける。 いつかは終焉が見つかる。 そう、信じて ・・・私は独り、歩き続けるのだろうか。 |
【二律背反】
| 聳え立つは、黒き塔。 過ぎいくは、無為な時。 立ちはだかるは・・・ 「―――私を、倒してみろ。できるものならな」 愛しき、君よ・・・・・・。 「・・・倒す、さ」 我が、心に誓って。 我が、我でいられるために。 我の力を試すために・・・ 漆黒なる出で立ちの男と、 真白き装いの女。 互いの瞳は互いの相貌を捕らえ、 互いの手にある剣は、互いの影を捉えた。 そこにあるのは、静寂と強い意志のみ。 互いの存在を確かめ、その意味を見出したいという、私欲。 その欲の前に、人は脆弱なる心に張りぼての壁を作る。 その欲に屈する時、人は言葉すら失い自我という不毛の地にただ一人、 立ちすくす。 なんという、儚き命・・・ そして。 今日もまた、命のともし火が風前に2つ揺れていた。 |
【甘い誘惑】
| 雨にぬれた冷たい岩肌を、どうにか伸ばした左手が捕らえる。 その左手に全体重をかけて、今度は左足を伸ばした。 そして次は右手を・・・ この絶壁はいつまで続くのだろう。 頂上は見えているのに、少しずつ近づいているはずなのに、 ちっとも終わりが見えない・・・ 悴んだ手に、岩肌の感触はなく 踏みしめる足に、体の重みは感じられない。 自分は立っているのか、それとも寝ているのか 這っているのか、寄りかかっているのか そんなことも、わからなくなり始めていた。 何度、下へ落ちたことだろう。 何度、この岩に手を掛けたことだろう。 ・・・・・・。 今度落ちたら、終わりかもしれない。 終われるのかもしれない・・・? そう、この果てなく続く地獄から 開放されるには、二つ方法があるのだ。 どうしていままで気がつかなかったのか・・・ 天を仰ぎ、私は瞳を閉じる。 そして、私は――― |
【死の葛藤】
| ―――なぜだ・・・なぜだぁぁあぁああぁぁっっ!!! もはや声にもならない掠れた”音”を、私は叫び続ける。 失ったものは大きく、果てなく・・・ 暗く、重く、私のこころに圧し掛かる。 ただ思うのは、”なぜ”という気持ち。 ”どうしたら”いいのかという当惑の気持ち。 そのために”何もすることができない”というあきらめ――― ・・・チガウ・・・ 心の奥底で、小さな何かがそれに反発する。 ・・・ソレハ、アマエ。 タヨル、キモチ。 ムイミナ、コト・・・ 人が、優しくしてくれるから、 優しくするのではなく・・・ 誰かが、解決してくれるから、 それにたよるのではなく・・・ 貴方が信じてくれるから、 信じるのではない・・・ ―――けれども私は・・・裏切られた・・・ 否定しようのない、事実がそれを奥底に追いやろうとする。 見つけた一条の光の筋を、かき消そうとする・・・ ・・・違う。 さっきよりも、はっきりと聞こえる”声” なぜ、信じきれなかったのか。裏切られることが怖かったからか。 それで裏切られて、他人からあざ笑われるのが怖かったからか。 愚か者に成り下がるのが、怖かったからか・・・。 ・・・愚者に、なるがいい。 それは、そう私に告げる。 困惑する私に、もう一度言う。 ・・・愚者で、あればいい。己が愚者であることを、覚えておけばいい。 夜が明けるように、目の前が明るく感じられた。 ・・・そうすれば――― 差し出された手を、私はしっかりと握り締める。 ・・・貴方は優しすぎる・・・ でも・・・ きっと、今度は放さないから。 きっと、大丈夫だから。 きっと・・・ |
【祈り】
| 心地よかったぬくもりはやがて、夜露のごとく冷め切り 懐かしき思い出は、色あせた羊皮紙の一面に似て 君のその瞳は、もはや黒曜石のごとく沈んだ輝きを放つのみ・・・ ああ、主よ 私が見ていたものは、幻だったのか。夢だったのか。 ・・・彼(か)の影に埋もれた心に光は差すのだろうか――― |
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