#10
計画は、速やかに実行に移された。
真夜中の奇襲。城を正面から責めるグループと、後ろから責めるグループと。
二班に分かれて、侵入は始まった。
「待っていましたよ、ジェット。それに・・・ブレイズ。」
皮肉めいた笑みを浮かべ、アスベストは王室の玉座で私たちを待っていた。横には、数
人の兵士と、ヤグリドで出会った黒ずくめの男がいた。
「貴方が目覚めたことは、イライジャから聞いていた。」
それが、おそらくヤグリドの男。ブレイズが一歩前に出て、私に告げた。
「貴方は、アスベストとだけ戦ってください。私が、イライジャを倒します。彼は人ではない。
空間構成を変える術は、アスベストと戦う貴方には厳しいでしょう。」
「他の兵士たちは、私たちに!」
「―――頼む。」
剣を包む布を取り払い、私は剣を構えた。その姿を見て、アスベストは笑った。
「・・・使えるんですか、貴方にその剣が?それは、私のもの。貴方が死ななかったのは、
真の名のせいなんですよ!」
そう言うと、彼もまた自らの剣を手に取った。周りでは、兵士たちとポッシュたちが戦う声
が聞こえる。
「未来は、わからないんですよ。だから面白いんでしょうね。」
互いの剣を交え、彼は私にそう言った。
「違うな。」
彼の剣を弾き、私は数歩退いて言った。
「なにが、違うと?」
「お前には、その言葉の真意はわからない。だから―――」
そして私は強く念じた。
「お前は、私には勝てない!」
振り上げた己の剣の黒い刀身が、私の目の奥に微かな残像を残した。
その剣は、虚構を貫く。
―――滅びよ、永遠なる幻よ!
・
・
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そして私は、アスベストを倒した。
「これから、どうするんですか?」
全てを終え、城から出てみると朝日が燦然と輝いていた。
「是非、新王としてロワール国を作っていきましょう!」
「ガルフ様!」
数歩歩き、私は背後の仲間を振り返った。
「私は、王にはならん。」
「な、なぜでやんすか!?」
「別に嫌だとダダをこねているわけではない。私は、真の名を知っている。これをどうにか
しないかぎり、私は人並みには生きられない。永遠に若いままなんだぞ?国民が耐えら
れるわけがあるまい。」
再び城を背にして歩き出した。
「真の名を、どうするつもりですか?」
ブレイズの言葉を受け、私は足を止めた。
「忘却。忘れる方法を見つける。そうすれば、人に戻ることができるはずだ。」
「そうしたら、また王として、国を・・・っ」
「まあ、考えておこう。それまでは、お前たちに預けておく。」
そして、私は独り、歩き出した。
街の入り口の門まできた。
別れの挨拶など、要らないだろう。
部屋に置いてきたロットのことを思い出し、そんなことを考えていた。その矢先―――
「ちょっと、置いていくなんて、どういう了見よ!」
突けんどんなもの言い。彼女は慣れた手付きで、呆然とする私の胸ぐらを掴んだ。
「ロット、なぜここに?」
「ガルフ様、まさかあっしらも置いていくなんて言わないですよね?」
馬車の中から、ポッシュとティムが顔を覗かせた。
お前たちも、いたんだな。
そして馬車に乗り込んだ私を迎えたのは、もう一人―――
「ブ、ブレイズ?」
「―――私がいては、いけませんか?」
相変わらずの口調でそう言われ。
「いや・・・・・・」
「そうそう、私も真の名を捨てようかと思いましてね。貴方に是非、つけて頂きたいのです
が。」
「なぜ、私なんだ?」
「私のこだわりのようなものです。」
「そうだな・・・・・・。」
考えることその場でしばし。
「フリックでどうだ?」
「光―――ガルフの対の言葉ですか。気に入りましたよ、ガルフ。」
「でもガルフ様、これからどこへ行くんですか?」
「適当に、気の向くままに行く・・・文句がある奴は馬車から放り出すからな。」
笑いながら言う私に、フリックもまた微笑を漏らす。
ロットはうんざりしたような顔をして、ポッシュとティムは長い溜め息を吐いた。
そうして私の旅は続く。
――完――